石郷岡敬佳の作品について

 

  石郷岡氏の作品を目にすると、作品全体から放たれる強烈な色彩とフォルムに

まず、圧倒される。ある作品においては画面中央の一点から滲み出た絵の具が同

心円状に拡散し、またある作品ではダイナミックにうねりながら別の色彩と融合する。

細部に目をやると、変化に富むマチエールが更に奥深い世界を演出していることに

気がつく。このマチエールが石郷岡作品の魅力の1つでもある。

  では〈マチエールの魔術師〉と呼ばれるほどの技巧はどのようにして創出されたの

であろうか? 発想の源は、「陶芸における窯変を抽象絵画に応用」する事であった。

これは石 郷岡氏本人より伺ったことなので間違いないことであるが、 問題は窯変を

いかにコントロールし、統一した絵画世界を構築するかである。暖色と寒色のバラン

ス、多様性と統一、そしてムーブメント・・・。 氏の作品には一点の隙もない。窯変の

技法を抽象絵画に応用し、見事に完成させた氏の存在は極めて稀有である。

  最後にどうしても触れておかなければならないことは、氏は何を描き、描こうとして

いるのか、という点である。 ある人は「日本文化のわびとさび」を表現したと言い、あ

る人は「伝統的日本文化を現代の油彩に」具現化したと言う。またある人は「宇宙的

とも思える幽玄かつ華麗な独自な世界」を描いたと述べている。 石郷岡作品には一

つの範疇に収まりきれない多様性と発展性が秘められており、何を描いたのかは石

郷岡本人より聞き出す以外にないのではないかと思う。ただ、氏が若い日に綴った一

遍の詩があり、絵画の底に流れる精神を表現しているように思われる。

 ここに、その詩を掲載する。

 

 

 

 

 

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無限への遊び

 

私は北海道の大自然の中で生まれ育った

自然は心のふる里である

冷え枯れたきわみ

初冬の湖に照り映える月

静寂の極致

静謐・凝固・諦念

冷え枯るる孤高の幽玄

枯野のすすき

黎明の月

原野の冬木

遠い山嶺の雪

荒涼たる氷原の艶麗

湖上に舞う波頭の かなたに

みだれ飛ぶ水滴

粉雪さながらに舞う 蒔絵の金銀砂子の

この華麗

彼の幽玄は冷え寂びたきわみに

さびしく

鋭く

芸術空間の小宇宙から

美的大宇宙へ

不条理の中から

絶対的不動の実在を求め

不遍妥当の美を求め

無限の時間と空間と

生と死を超克した所に

私の絵画は成立する

 

 

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以下  何人かの論評を掲載する

 

 

                   西洋絵画が追い越されるとき ・・・ ベアトラン・デュプレッシ

                  豪華絢爛は美的センスのもの ・・・ ピエール・レスタニ

                  東方の兆し            ・・・ マルチーヌ・アルノ

                  宇宙生成の根源へ迫る     ・・・ 栗田 勇

              宇宙生成大爆発の画家     ・・・ アンドレ・パリノ

                  ぜいたくな質感の奔流に思う  ・・・ 石原慎太郎との対談