ロイユ1989年12月号

              豪華絢爛は美的センスのもの

                                 ピエール・レスタニ

 

                         栗田がうまい見方をしたが、 石郷岡敬佳の作品には宇宙の息吹、

                   普遍の震えがある。

                   マチエールの効果がどれぼどうっとりするものであろうと、深遠な黒

                   光り輝くばかりの金、椿の淡紅色の豪華、洗練、官能の中に、原始的

                   な地力を思い起こさせる。創生のマグマの火山溶岩が融合した、自ら

                   の起源に石郷岡は忠実なのだ。

                    ”北海道の大自然の中で生まれ育った  自然は私の心のふるさと

                   である” 北海道、冷えと果てしもなく静寂な冬の島。

                   この哲学者の風貌をした人の良い巨人は、大地のように静寂である。

                   彼は知っているのだ、大地もまた振動し、雪下に永遠の炎を本質を閉

                   じこめている事を。郷愁の解毒剤は豪華絢爛だ。

                    石郷岡は桃山時代のあらゆる”はで”を現代に受け継ぐ後継者だ。

                   豪快な身振りで流れ込むアンフォルメルな抽象画を彼は創り出す。

                    50年代パリではドウモト・ヒサオとイマイが最も傑出した代表的画家

                   であった。それは戦後日本芸術の抽象と抒情の系譜にある。石郷岡

                   は、また、日本の遍歴と伝統の人でもある。 アトリエを世界中に分散

                   させ、 東京、ニューヨーク、 そして最近ノルマンディーの城絵を修復

                   改造した。 この遍歴は、彼が存在の規律の中で最も明白なものであ

                   る詩人の遍歴である。