はさき漁協
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■ いばらきの旬のさかな >> 冬 ・あんこう

[ 南のふぐに北のあんこう ]

 つぶれたような平たい魚体、大きな頭、巨大な口には鋭い歯が並ぶちょっとグロテスクなキャラクターの魚です。しかし、姿に似合わず、その味は淡泊で、しかも捨てるところがないのです。
 南のふぐに北のあんこうと並び賞されるあんこうは、茨城を代表する冬の味覚です。晩秋から早春まで県内各地であんこう料理が楽しめます。
 なかでも、あんこうの肝臓(あん肝)は珍重されます。世界の3大珍味といえば、フォアグラ(ガチョウの肝臓)、トリュフ(きのこ)、キャビア(チョウザメの卵)のことです。しかし、フォアグラよりもあん肝のほうが美味しいという人もいるくらいです。


[ 形と生活 ]

 あんこうは世界中に分布していますが、食用にするのは日本だけのようです。日本では北海道以南の比較的深い海に生息し、体長1.5メートルに達します。食用にするのはきあんこうとくつあんこうという2種類です。一般的にあんこうと呼んでいるのは、標準和名きあんこうのことで、本県の水揚げのほとんどはこの種類です。くつあんこうは口の中が黒いので区別することが出来ます。
 産卵期は、南で早く北で遅いのですが、仙台湾では5〜7月です。2年で30〜40センチになりますが、詳しい生態はあまりよく知られていません。
 体は扁平で常に海底にへばりついているため、泳ぎはあまり上手ではないのですが、夜間は活発に動き回り、時には海面まで浮上することもあるといいます。あんこうのことを英語ではアングラーフィッシュといいますが、体を岩に見せかけ、小魚が近づいてくるとアンテナ状の突起物で誘って大きな口でパクリとやってしまう生態は有名です。
 ほぼ、一年中とれますが、寒さに備えて、肝臓が肥大する冬が旬です。春になると味が落ちるのをたとえて、「魚偏に安いと書くは春のこと」という川柳があります。


[ 漁業の状況 ]

 県内各地の底曳網漁船によって漁獲されています。特に北茨城の平潟、日立市の久慈漁港は底曳網漁業が盛んなため、水揚げが多いのです。底曳網は、いろいろな種類の魚が混じって獲れるので、あんこうはその中の一種類というわけです。
 あんこうの漁獲量は、昭和30年代には749トンという記録が残っていますが、現在の水揚げは数十トン程度です。あんこうの漁獲量は、比較的短い周期で局地的な増減があり、近年の茨城の水揚げは増加の傾向にあります。


[ 捨てるところのないあんこう]

 あんこうといえば吊し切りが有名です。巨体の上に柔らかでヌルヌルしているので、まな板の上でさばくのは容易なことではありません。金具に丈夫なあごをひっかけて上からあんこうを吊し、大きな口から水を入れて安定させてからさばいていくのが吊し切りです。
 まず、エラと尾を落とし、口から皮をはいでから、内臓や身を切り取っていくのが定石です。ただ、最近は吊し切りをする人は減ってきているといいます。 さばかれたあんこうは、あごと中骨だけが残ります。季節になると県内の料理屋や民宿・旅館の軒先では、さばいた後の骨だけが何本も架けられているのを見ることが出来ます。


[ 目利き ]

 一匹で買うときは、肝が大きく張りのあるものを選びます。胃のあたりが膨らんでいるものは、食べた魚などがたくさん入っていることがあります。重量に響くので確かめた方がいいです。あんこうは腹を上にして売られているのはそういったことを確かめるためです。
 切り身の場合には、肉に透明感があり、プリプリしているものが新鮮です。臭いをかいでみるのも有効な判断材料になります。
 あんこうは大きいものが美味しいです。最近は水揚げが減っており、手に入りにくくなっていますが、できれば8キロ程度のものがいいです。


[ 味わいと栄養 ]

 あんこうといえばあんこう鍋です。あんこう鍋は、水戸や平潟が有名ですが、これはもともとあんこうが商品価値がなかった頃、漁師が漁船の上で作って食べた「どぶ汁」がスタートです。庶民料理の傑作です。どぶ汁は、あん肝をほぐしてとろ火で煮詰め、これにあり合わせの野菜とあんこうを入れて作る濃厚な鍋物ですが、あんこう鍋は、これをだし汁で割って作ります。
 味噌、肝汁をだし汁でのばし、あんこうの「7つ道具」と白菜、大根、しいたけ、春菊、ねぎなどの野菜を入れて煮込みます。7つ道具とは皮、トモ(尾の部分)、えら、柳肉(ほお)、ぬの(卵巣)、水袋(胃)、きも(肝臓)のことで、7つ道具のそれぞれ違った歯ごたえ、味わいもあんこう鍋の楽しみのひとつです。こうして作ったあんこう鍋は、二度炊きが美味しいです。汁が野菜によくしみ込んで、味に深みが出ます。煮過ぎかなと思うくらいの熱々の鍋をぜひ味わってみたいです。
 このほか、代表的なあんこうの食べ方には共酢があります。これは、ゆでたあんこうを酢味噌でのばしたあん肝につけて食べるもので、淡泊な味わいです。 あんこうの肉は脂肪が少なく、低カロリーです。また、あん肝には多量のビタミンAが含まれています。



はさき漁業協同組合